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5年生の壁を越えるための読解ルール
中学受験の国語において、5年生の後半は一つの大きな転換期となります 。
それまで読書習慣があり、なんとなく「センス」で解けていた子ほど、急激な難化に戸惑うケースが少なくありません。
これまで通用していた「感覚」がなぜ通用しなくなるのか。
そして、偏差値50台で足踏みしている状態から、どうすれば60台後半の安定圏へ抜け出せるのか。
我が家の実体験を交えながら、その具体的な解決策と判断基準を整理してお伝えします 。

5年生の「国語の壁」—なぜセンスだけでは通用しなくなるのか
4年生や5年生の前半までは、物語文も説明文も、比較的日常に近いテーマが扱われます。
しかし、5年生の終わりから6年生にかけて、文章の抽象度は一気に上がります。
語彙が難しくなるのはもちろんですが、それ以上に「大人の精神年齢」を求められるような、複雑な人間関係や哲学的なテーマが増えてくるからです。
ここで多くの受験生が陥るのが、「自分の知っている範囲」で文章を補完してしまうという罠です。
特に、読むスピードが速く、読書が好きな子ほど注意が必要です。
文章を速く処理できる分、細部を自分の想像で埋めてしまい、本文には書かれていない「自分のストーリー」を無意識に作り上げてしまう傾向があるからです。
「こうあるべき」という道徳的な思い込みが正解を遠ざける
多くの親御さんを悩ませるのが、お子さまが「道徳的に正しい選択肢」を選んでしまう現象です。
たとえば、物語文で主人公が葛藤している場面において、本文には「本当は逃げ出したい」と書かれているのに、選択肢の中から「勇気を持って立ち向かうべきだ」というニュアンスのものを選んでしまう。
これは、お子さまの中に「こうあるべき」「これが正しい姿だ」という理想や道徳観があるからこそ起こるミスです。
しかし、中学受験の国語は「道徳のテスト」ではありません。
求められているのは、あなたの意見ではなく、「筆者がどう書いているか」「登場人物がどう感じているか」を、本文という証拠から客観的に見つけ出す作業です。
この「自分を消して、本文に従う」という感覚は、子どもにとっては非常に高度な客観性を必要とします。
これを「気持ちの問題」として片付けるのではなく、「解法のルール」として教え込む必要があります 。
読解を「技術」に変える印付けのルールとその功罪
センスに頼らない国語を実現するための一つの有効な手段が、文章に「印(しるし)」をつける技術です。
- 登場人物の整理: 誰が誰に対してどう思っているか(相関図の意識)
- 心情表現の抽出: 感情を表す言葉だけでなく、そのきっかけとなった出来事とのセット
- 重要な接続詞: 「しかし(逆接)」「つまり(換言)」など、文章の構造を視覚化する
ただし、ここで注意が必要なのは、「印をつけること自体が目的化してしまう」というリスクです。
「先生に言われたから線を引いているけれど、頭の中には何も残っていない」という状態になってしまう子が一定数存在します。
印付けはあくまで内容を理解するための「補助」であり、作業ではありません。
もし印をつけることでかえって読むリズムが崩れ、内容が入らなくなっている場合は、その子に合った別のスタイル(たとえば、接続詞だけに絞る、段落ごとに一言メモを残すなど)を模索する必要があります。
【体験談】偏差値55から69.6へ。半年間の試行錯誤で見えた「わが家の正解」
わが家の場合も、まさにこの「思い込み」と「自己流の処理」が壁となっていました。
4年生の頃は読書習慣のおかげでスピードもあり、国語は得意な方だと思っていたのです。
しかし、5年生の終わり頃から、問題文や設問がワンランク難しくなると対応できなくなりました。
偏差値は55程度。本文に印(マーク)はつけているものの、それが正しいのかも分からず、本人のルールの中で処理をしているような状態でした。
そんな時、国語の専門塾の先生を紹介してもらいました。
講義のほか、徹底的に印(マーク)付けが「ルール通りにできているか」をチェックしていただきました。
先生からは「このルールが体に染み込み、無意識にできるようになるまでには、最低でも半年は見てください」と言われました。
実際に、4ヶ月ほど経った頃から変化が現れ始めました。
本文を「自分の色」で見るのではなく、印を追うことで「客観的な証拠」に基づいて答えを出せるようになってきたのです。
その結果、夏過ぎには偏差値62を切ることがなくなり、11月には67.0、12月には69.6まで到達しました。
最後には「これだけルール通りにやって取れないのなら、もう仕方がない」と、親子で落ち着いた気持ちで本番の入試に臨めるまでになったのです。
外部の専門性を借りるタイミングと判断基準
わが家はたまたま専門塾で子どもに合った指導を受けることが出来、幸いにも半年で成果が出ましたが、もしその指導法が合っていなければ、さらに別の方法を探すために半年が必要だったはずです。
そうなれば、入試には間に合っていなかったかもしれません。
国語のスタイルが本当にその子に合っているかを判断するには、数ヶ月から半年の継続的な観察が必要です。
そのため、もし外部の専門塾や個別指導を検討されるのであれば、5年生の秋くらいには動き出しておくことをおすすめします。
6年生になってからでは、試行錯誤の時間が足りなくなるリスクがあるからです。
もちろん、いきなり外部を頼る必要はありません。
まずは今通っている塾の国語の先生に相談するのが第一歩です 。
「うちの子は、本文のどこを根拠に解いていますか?」「印の付け方は機能していますか?」と具体的に問いかけてみてください。
プロの目から見て「読み方自体に修正が必要だ」という判断であれば、そこから本格的な対策を検討すればよいのです。
国語は「根拠」を積み上げるパズルである
国語は、一度「読み方のルール」を身につけてしまえば、算数のように大きな計算ミスで崩れることが少ない、非常に安定した得点源になります 。
もし今、お子さまが「思い込み」や「道徳的な理想」で解いてしまっているのなら、それはステップアップのチャンスです。
センスという不安定なものに頼るのをやめ、半年かけて「ルールの徹底」という地道な作業に取り組んでみてください。
わが家が偏差値69に到達したとき、そこにあったのは驚きではなく、「ルール通りに積み上げた結果」という納得感でした。