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【中学受験】スマホは「そこにあるだけ」で偏差値を下げる?わが家のルールと、合格後の「LINE2000件」の話

中学受験の準備が本格化する小4の春。 塾通いが始まると同時に、多くのご家庭で持ち上がるのが「スマホ問題」です。

「帰りが遅くなるから、GPS代わりに持たせたい」 「でも、ゲームや動画にハマって勉強しなくなったらどうしよう」 「女子特有のLINEトラブルも怖い……」

そんな不安と葛藤の間で揺れ動くお母さんは少なくありません。 わが家も同じでした。安心のために持たせたいけれど、毒にはしたくない。そこで徹底的に調べ、実践したのは「スマホを、受験の武器にするための厳しいルール」でした。

今回は、わが家が実践した制限の全貌と、それを裏付ける「恐ろしい科学的データ」、そして合格後に訪れた「スマホ解禁」の仰天エピソードをお話しします。

なぜ「勉強中は別室」が絶対なのか?

まず、精神論ではなく「脳の仕組み」の話から始めさせてください。 多くのご家庭で「勉強中はスマホを触らない」「机の端に置いておく」というルールがあると思います。しかし、実は「視界に入っている」というだけで、子どもの脳は深刻なダメージを受けていることをご存知でしょうか。

テキサス大学が証明した「脳の漏出(Brain Drain)」

2017年、テキサス大学オースティン校のエイドリアン・ウォード博士らの研究チームが、非常に興味深い実験結果を発表しました。約800人のスマートフォンユーザーを対象に、認知能力を測るテストを行ったのです。

被験者を以下の3つのグループに分けました。

  1. スマホを「机の上」に置く(裏返しでもOK)
  2. スマホを「ポケットやバッグ」に入れる
  3. スマホを「別の部屋」に置く

結果は衝撃的でした。 「別の部屋」に置いたグループは、「机の上」に置いたグループに比べて、テストの正答率が約11%も高かったのです。

11%という数字、中学受験の世界では合否を分ける決定的な差です。偏差値50の子が、環境を変えるだけで55や60のパフォーマンスを出せるかもしれない。逆に言えば、机の上にスマホがあるだけで、本来の実力の1割以上をドブに捨てていることになります。

このデータを見て、私はすぐに娘と話し合いました。 「スマホの電源を切りなさい(やめなさい)」と頭ごなしに言うのではなく、「あなたの努力がムダになるのが悔しい」という気持ちを伝えたのです。

せっかく100点の勉強をしていても、スマホを横にに置いておくだけで脳が勝手に疲れてで90点になるんだって。
それってすごくもったいなくない?
だから勉強の時だけはスマホは別の部屋に置いておこう!

この「もったいない理論」は娘にも響いたようで、すんなりと納得してくれました。 その習慣は続き、中学生になった今でも、勉強を始めるときは自ら進んで別の部屋にスマホを置きに来ています。

「気にしていないつもり」でも脳は働いている

なぜこんなことが起きるのでしょうか? 研究チームはこれを「ブレイン・ドレイン(脳の排出)」と名付けました。 私たちの脳は、スマホが視界にあると、無意識のうちに「スマホを気にしないようにする」「通知を無視する」という抑制の作業にエネルギーを使ってしまいます。

人間が一度に使える集中力の容量(ワーキングメモリ)は決まっています。 「スマホを見ないようにする」ことに脳のメモリの一部が割かれてしまうため、肝心の「難問を解く」「文章を読み解く」ために使えるメモリが減ってしまうのです。 たとえ電源がオフでも、マナーモードでも結果は同じでした。物理的に「見えない場所」に隔離するしか、防ぐ方法はないのです。

東北大学が示す「勉強時間が帳消しになる」恐怖

もう一つ、私たち日本の親にとって無視できないデータがあります。 「スマホ脳」などの著書でも知られる東北大学の川島隆太教授らが、仙台市の小中学生約7万人を対象に行った大規模調査です。

そのデータが示す事実は残酷です。「家で2時間以上勉強していても、スマホ(特にLINEなどの通信アプリ)を長時間(3時間以上)使っている子は、家で『ほとんど勉強しない』がスマホも使わない子よりも、数学のテストの平均点が低い」という結果が出ているのです。

つまり、どんなに塾で頑張り、家で必死に宿題をこなしても、そのあとにダラダラとスマホをいじり続けてしまえば、積み上げた学習効果が「帳消し」どころかマイナスになってしまう可能性があるということ。 これを知った時、私は「スマホの管理は、親の最重要任務だ」と覚悟を決めました。

わが家の「鉄壁」スマホ運用ルール

科学的な根拠を知った上で、わが家では娘の通塾開始に合わせてスマホを導入しました。 ただし、それは「おもちゃ」ではなく、あくまで「安全装置」としての導入です。

1. 本音を言えば「キッズ携帯」で十分

わが家の場合は、私の古いiPhoneに格安SIMを入れて渡しましたが、正直なところ「キッズ携帯」で十分だったとも思います。 GPS機能があり、親と通話ができ、防犯ブザーがついている。余計なアプリが入らない分、親の管理の手間も減ります。「うちは絶対にアプリ学習なんてしない」というご家庭なら、迷わずキッズ携帯をおすすめします。

2. スマホを選んだ理由は「WordHolic」を使いたかったから

それでもわが家があえてスマホ(iPhone)を選んだのには、明確な理由がありました。 どうしても使わせたい「神アプリ」があったからです。

それが、単語帳アプリ「WordHolic(ワードホリック)」です。

これは自分で単語カードを作れるアプリなのですが、中学受験の暗記項目において最強の威力を発揮しました。

  • 理科の植物・天体
  • 社会の年号・地理データ
  • 国語の漢字・語句

これらをすべて私がエクセル(Excel)で管理し、CSV形式でアプリに読み込ませていました。 紙の単語帳を作る手間が省けますし、「覚えた」「覚えていない」のチェック機能がついているので、娘は「覚えていない」カードだけを繰り返し隙間時間に回すことができます。

この「親がデータ管理し、子は実行するだけ」という効率的なシステムを作るためだけに、スマホを持たせたと言っても過言ではありません。

3. 「娯楽アプリ」は徹底排除

逆に言えば、それ以外の機能は不要です。一部の学習アプリ(都道府県クイズや漢字など)は許可していましたが、 YouTube、ゲーム、SNS(LINE含む)はプリインストールされている場合はアプリを削除。また新しいアプリは「親の許可なくインストールできない」ように設定にしました。

Webブラウザ(Safari)も、調べ物で使うことはありましたが、1日15分などの時間制限をかけました。 フィルタリングも最強レベルに設定し、「有害サイト」だけでなく、受験に関係のないエンタメ系サイトもブロック。 結果、娘の手元にあるのは「WordHolic専用マシン」のような物体でした。

4. 「LINE」なしで困らないのか?

「クラスの女子連絡網とか、お友達との会話についていけないのでは?」 そんな心配もありましたが、結論から言うと「全く問題なし」でした。 もしどうしても連絡が必要な時(待ち合わせなど)は、電話番号を使ったショートメッセージ(SMS)を使わせました。これならスタンプもグループチャットもないので、用件のみで済みます。

小学校高学年の女子は、LINEでの言葉の行き違いや「既読スルー」「グループ外し」などのトラブルが頻発する時期です。 「うちは親が厳しくて、LINE禁止なんだよね〜」 そう公言することで、面倒な人間関係のトラブルから自然と距離を置くことができました。これは、メンタルの安定が何より重要な受験期において、大きなメリットだったと感じます。

塾で見かけた「スイッチが切れない」子たち

塾への送迎や、公開模試の会場などで、他の受験生たちの様子を見る機会がありました。 そこで目にしたのは、制限なくスマホを持たされている子たちの姿です。

駅のホームや塾のロビーで、一心不乱にスマホゲームに興じる男子たち。 無料のゲームアプリを次々とインストールし、待ち時間のすべてを画面の中で過ごしているように見えました。

もちろん、長い受験生活には息抜きも必要です。彼らも「ちょっとした休憩」のつもりなのかもしれません。 でも、手軽に刺激が得られるスマホゲームは、子どもの未熟な脳には強烈すぎます。 「さあ、勉強だ」と思っても、脳は興奮状態(ドーパミン中毒モード)からすぐには切り替わりません。

結果として、「持ち時間(自由時間)」のすべてが、なし崩し的に画面の中に吸い込まれていく。 そんな様子を横で見ながら、娘も「楽しそうだな」とは思いつつ、「でも、あれを持ってたら私もやめられないかも……」と、その中毒性の高さを子どもなりに感じ取っていたようでした。

通塾時間が短いこともあり、わが家の子はスマホをほとんど使いませんでした。 唯一の例外は、志望校別特訓などで遠くの教室へ行く電車の中。 先ほどの「WordHolic」を使って、社会の重要語句をひたすらめくる。 重いテキストを開けない満員電車でも、スマホなら片手で復習ができる。 「スマホは遊び道具じゃなくて、文房具の一種」 その認識を刷り込むことには成功していたと思います。

合格後の「爆発」と、つながる安心感

そして迎えた2月。 長い長い受験生活が終わり、娘は無事に第一志望の難関校に合格しました。 わが家では、モチベーション維持のために「合格ランク別・スマホ購入計画」を立てていました。

  • 第一志望合格: 最新のiPhone
  • 第二志望合格: 1世代前のiPhone
  • 第三志望合格: 2世代前のiPhone

約束通り、ピカピカの最新iPhoneを手に入れた娘。 そして、その日のうちに「LINE」を解禁。 小学校卒業までのわずか1ヶ月あまりで、クラスメートと猛烈な勢いでつながり始めました。

一晩で通知2000件の衝撃

解禁翌日の朝、娘のスマホを見て絶句しました。 LINEのアイコンについた赤いバッジの数字が「500」を超えていたのです。 グループLINEに入ったことで、スタンプの連打や挨拶の嵐。女子特有の終わらない会話で、多い時には一晩で2000件もの通知が溜まっていました。

「もし、受験直前の1月にこれを持たせていたら……」 想像するだけで背筋が凍りました。勉強どころではなかったはずです。 あの時、心を鬼にして制限しておいて本当によかった。心底そう思いました。

新生活の不安を埋めてくれたLINE

そして4月、新しい私立中学での生活が始まりました。 もちろん、塾で顔を見かけたことがある子はチラホラいます。でも、地元の小学校とは違い、大半は「はじめまして」の新しいお友達。 慣れない満員電車、進度の速い授業。 期待で胸はいっぱいでも、ふとした瞬間に心細さを感じることもあったようです。

そんな彼女を支えたのが、スマホ(LINE)でした。 入学してすぐに新しいクラスメートとLINEを交換することで、一気に距離が縮まりました。 「明日の持ち物、これで合ってる?」 「部活の見学、一緒に行かない?」 そんな何気ないやりとりができる相手がいるだけで、学校へ行く足取りが軽くなります。

また、別々の学校に進んだ「小学校時代の友人たち」ともつながり続けられたことも、大きな心の支えでした。 それぞれの場所で頑張る幼馴染と、「そっちはどう?」「制服かわいいね」と励まし合う時間。 新しい世界での挑戦と、昔からの安心できる居場所。 その両方を手のひらの中で大切にしながら、娘は充実した中学生活をスタートさせることができました。

これから受験を迎えるママへ

最後に、これから中学受験という荒波に挑むお母さんたちへ。 スマホは便利な道具ですが、使い方を間違えれば、子どもの可能性を奪う凶器にもなります。

大切なのは、親自身の「デジタル・ハイジーン(衛生)」の意識です。 子どもに「スマホを見るな」と言いながら、親がソファでダラダラとSNSを見ていては示しがつきません。 「勉強中は別室に置く」というルールは、ぜひ親子で一緒にやってみてください。親もスマホを離れる時間を作ることで、家の中の空気が「集中モード」に変わります。

109mama流・スマホルールのまとめ

  1. 物理的遮断: 勉強中は必ず「別の部屋」へ。視界に入れない。
  2. 機能制限: 親の古い機種かキッズ携帯を使う。アプリは親が管理。
  3. アプリ活用: 「WordHolic」など学習効率を上げるものだけを入れる。
  4. ご褒美設定: 最新機種やLINEは、合格後の「最高の楽しみ」にとっておく。

「厳しすぎるかな?」と迷う必要はありません。 子どもの脳を守れるのは、世界中でママ&パパだけです。 そして、その我慢の先には、通知2000件に悲鳴を上げながらも、新しい友達、そして懐かしい友達と笑い合う我が子の幸せな姿が待っています。

どうか、自信を持って「わが家のルール」を貫いてくださいね。

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