塾・教材レビュー

【中学受験のスタート】2月:初めての公開テストの絶望を「戦略」に変えるには?

中学受験のスタートとなる2月。新学年のカリキュラムがいよいよ本格的に始動し、その実力を測る最初の大きなハードル「公開学力テスト」が実施されます 。塾の入り口でお子さんを待つお母様方の心境は、期待と不安が複雑に入り混じった、独特の緊張感に包まれていることでしょう。

そんな期待を背負って出てきたわが子の顔が、もし真っ青な顔をしていたら……。

これはわが子が低学年の頃の話です。小学校のテストは常に満点、クラスでも「勉強ができる子」ポジションでしたが、初めての公開テストを終えて塾から出てきたわが子の顔色は、真っ青を通り越して土気色(つちけいろ)でした(笑)。それは、初めて「自分の力ではどうにもならない高い壁」にぶつかった、子供なりの絶望のサインでした。

しかし、安心してください。そんなわが子も回数を重ねるごとに、「塾のテストは難しくて全部解けないこともあるんだ」とある程度腹をくくって、冷静にテストに向かうことができるようになっていきました。 今、お子さんが見せている絶望は、決して一生続くものではなく、受験生として脱皮するための通過儀礼なのです。

そんな時、喉まで出かかっている「どうだった?」「できた?」という言葉。実はこれ、今の時期の親子関係を壊しかねない、非常に危険な問いかけです。今回は、中学受験ママ(109mama)としての実体験とデータを基に、この「2月の洗礼」をどう乗り越え、長いマラソンを完走するための「ヒント」をご紹介します

「点数」という絶対評価の呪縛を解く

小学校のテストは「習ったことが身についているか」を確認するためのものです。そのため、80点なら「出来た、よく頑張った」、100点なら「完璧」という、点数そのものに意味がある「絶対評価」が通用します。

しかし、中学受験の公開テストは根本的に設計思想が異なります。基本的には100点はとれません。大勢の子どもたちの学力を正確に把握するため、幅広い学力に対応できるよう問題の難易度もA(易)~C(難)問まで出題されています。なかには正答率5%を切る問題もチラホラあります。そしてこの公開テストの結果で順位がきまり、クラス分けの資料としても利用されます。ここで、私が独自に整理した学年別・科目別平均点のレンジ(幅)を見てみましょう。この数字を知るだけで、いかに点数で一喜一憂することが無意味か、論理的に理解できるはずです。

学年国語算数理科社会
小445点〜70点55点〜75点50点〜75点60点〜75点
小545点〜70点50点〜70点50点〜75点50点〜75点
小640点〜60点45点〜55点45点〜65点40点〜70点

※これらは浜学園のある年の過去の公開テスト傾向に基づいた目安です。月によって難易度は激しく変動しますので参考程度にご利用ください。

この表が示す事実は非常に残酷で、かつ重要です。6年生になれば、たとえ40点を取ったとしても、平均点以上、あるいは偏差値50を超える可能性があるということです。

「80点取っても偏差値が低い月」もあれば、「50点でも偏差値が高い月」もある。これが中学受験の常識です。平均点が出るまでの数日間、点数だけを見て「うちの子は才能がない」「塾に行かせている意味がない」と絶望するのは、地図を持たずに嵐の海で嘆くようなものです。お母様が持つべき「正しい判断軸」の第一歩は、偏差値という相対的な評価が出るまで、評価を完全に保留することです

親の「顔色」が子供の「思考力」を止めるリスク

「私は怒っていないから大丈夫」「優しく迎えているつもり」 そうおっしゃるお母様は多いですが、子供の観察眼を甘く見てはいけません。中学受験に挑む子供たちは、親が想像する以上に「親を喜ばせたい」という本能的な願いを持って戦っています。

親が内心で焦っていたり、がっかりしていたりすると、その空気感は子供の脳にダイレクトに伝わり、ストレスホルモンを分泌させます。このストレスは、論理的思考を司る脳の働きを著しく低下させます。つまり、親がテストの結果を見て不機嫌になったり、暗い顔をしたりした状態で「解き直しをしなさい!」と伝えても、子供の脳はフリーズしており、何も吸収できないのです。

わが子が不安な顔で帰ってきた時、彼らの心の中は「自分はダメな子だ」「お母さんに怒られる」「期待を裏切った」という自己否定で満たされています。家庭は、どんなに外で打ちのめされても自分を肯定してもらえる「安全基地」であるべきです。親もイライラしてしまう気持ちは痛いほどわかりますが、理想をいえばテストの日は、戦ってきた勇気を全力で讃え、家庭の温度をいつも以上に温かく保つ。これが、次回のテストで子供が本来の力を発揮するための、最も効果的なサポートになると思います。
ホントにこれが難しいですが(笑)

2月・3月の「これだけは言わないで!」NGワード集

新年度が始まったばかりのこの時期、不安からつい口を滑らせてしまいがちな言葉があります。これらは子供のモチベーションを根底から破壊する「毒」となります。

  • 「〇〇ちゃんはあんなに取れているのに」 2月の時点での比較は全くの無意味です。能力の差ではなく、それまでの学習履歴(公文やそろばん、幼児教室など)単なる「スタートラインの差」に過ぎません。
  • 「小学校のテストはあんなにできるのに」 小学校のテストと塾のテストは、性質が180度異なります。学校のテストと比較して塾の成績を否定することは、子供のプライドを傷つけるだけです。
  • 「こんな点数で、塾に行かせる意味があるの?」 これは子供の人格と、これまでの努力を全否定する最悪の言葉です。点数が取れないのは「やり方」がまだ見つかっていないだけであり、本人の「価値」とは無関係です。

代わりに、2、3月は「初めての形式で、諦めずに最後までよく座って戦ったね」という、挑戦した行動そのものを肯定してあげてください。

テスト後の「できた?」を「プロセスの確認」に置き換える

テストが終わった直後、「できた?」という曖昧な質問を卒業しましょう。子どもは「わからない」と言うだけです。もし「出来た」「出来なかった」と言ったとしても根拠もありません。出来なかったと言われたとき、親も不安になりますしね。
代わりに、「プロセスの使い心地」を具体的に質問する習慣をつけてください。

  1. 「国語の文章、最後の設問までたどり着けた?」 → 読解のスピード感が足りないのか、時間配分が下手なのかを切り分けられます。
  2. 「算数の計算問題、見直しをする時間は作れた?」 → 焦りによるミスなのか、根本的に解き方がわからないのかを把握できます。

これらは評価を伴わない「事実確認」なので、子供も答えやすくなります。公開テストという特殊な形式に子供が慣れるまでには、だいたい3ヶ月から半年はかかると心得てください。最初の数回は、内容以前に「時間配分」や「解答用紙の埋め方」で失敗して当然なのです。

【実戦】わが家の「あと10点」解き直しメソッド

中学受験界隈では「その日のうちに全問解き直しをするのが鉄則」という、耳に痛い格言が飛び交います。確かに、灘中などを目指す最上位層(いわゆる50傑レベル)の子たちは、帰宅後すぐに机に向かい、90点台の高得点でも残りの数問を完璧に仕上げるかもしれません。

しかし、普通の家庭がそれを真似しようとすると、親子関係が崩壊します。体力的にも精神的にも限界なテストの日に、山のような「バツ」と向き合うのは苦行でしかありません。そこで私が提唱するのが、「あと10点分」だけの解き直しです。

  • 目標設定の明確化: 「あと2問取れていれば、目標の偏差値に届いたはず」というラインを親が予想し、その2問だけをピックアップして完璧にします。
  • 成功体験を積ませる: 全部完璧にするという無理難題ではなく、スモールステップで進めることが、子供の自己効力感を守ります。

選ぶ問題は、正答率が極端に低いC問題ではなく、A問題のケアレスミスや、もう少しで手が届きそうだったB問題です。背伸びをせず、等身大の弱点を埋めることこそが、急がば回れの合格近道になります

のんびりした性格の子であっても、学年が進めば不思議と「この問題、どう解くの?」と自分から解説を手に取る時期が来ます。それまでは、親が「捨てる勇気」を持ち、子供の負担をコントロールしてあげることが大切です。

小6の乱気流を乗りこなす「3ヶ月平均」の視点

特に6年生のママへお伝えしたいのが、成績の「波」との付き合い方です。 6年生の公開テストは難易度がぐっと上がります。6年生になると、複合問題や初見の問題が増えるため、単純な暗記では太刀打ちできなくなります。つまり、この平均点の低さは『子供がサボっている』のではなく『問題がそれだけ実戦的になった証拠』なんです。

またこの時期、特に下位クラスにいるお子様にとっては、非常に過酷な時期となります。かなり低い点数を目にし続けることで、「自分には無理だ」とテストを受けるモチベーションそのものが下がってしまうケースも少なくありません。

だからこそ、ここでも点数に目を向けず、「目標との差」だけに注目させてあげてください。そして、最も知っておいていただきたい事実は、「成績は、最後の最後まで安定しないのが普通である」ということです。

実際にわが家の場合も、小6の1年間の偏差値は3科平均で55.6〜68.2という、激しい上下を経験しました。単科で見れば偏差値56の翌月に70を叩き出したと思えば、またその翌月に60を切る。これが、出題範囲が広がり、苦手単元の有無がダイレクトに響く6年生の公開テストの怖さ…。偏差値が10以上動くのは、中学受験の世界では日常茶飯事です。常に一直線で安定しているのは、最上位のごく一部の層だけ。それ以外の子は、波があって当然なのです。

でも、その上下を全部足して3で割ってみてください。驚くほど『本当の実力』がそこに浮かび上がってきます

  • 1ヶ月の不調は「事故」
  • 3ヶ月の平均は「実力」

この冷静な視点を持つことで、お母様のメンタルは劇的に安定します。下がった月は「伸び代が見つかった」と割り切り、淡々とヌケを埋めていく。その繰り返しが、最後の一歩を支えます。

お母さんの「待つ力」が、子供の伸び代を守る

テストを終えて帰ってきたお子さんの顔が落ち込んでいたら、それは彼らが限界まで戦った証です。2月や3月の結果で、子供の将来が決まるわけではありません。むしろ、この時期の挫折を親子でどう乗り越えるかが、今後の大きな糧になります。

「お疲れ様。今日、何食べたい?」

その一言で家庭の空気を緩め、羽を休ませてあげてください。データに基づいた冷静な戦略と、あたたかい伴走。この両輪が揃って初めて、中学受験という長い旅路を笑顔で完走することができるのです。

不安な夜を過ごすお母様の心を少しでも軽くすることを願っています。

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