
小学校3年生までの娘は、本を読む子ではありませんでした。
「読書が嫌い」というより、そもそも“本を読む”という選択肢が生活の中に存在していない、そんな感じです。
学校の授業中、早く課題が終わった子は静かに読書をしていることが多いそうですが、娘は折り紙を折ったり、自由帳いっぱいに絵を描いて時間を過ごしていました。
図書室で借りてくるのも『ミッケ!』や迷路の本、家で欲しがるのはマインクラフトの攻略本とマンガの伝記シリーズ。
3年生のある日、娘が持ち帰ってきた図書室の本を見て私は思わず硬直しました。
手にしていたのは「図鑑・近畿地方」。
ずっしり重たくて、思わず
これ、本当に持って帰ってくる本だった……?
と聞いてしまいました。
そんな娘が読書家になる姿なんて、まだまったく想像できませんでした。
それでも、思いがけないきっかけがいくつも重なり、娘は少しずつ「本の世界」に足を踏み入れていきます。
ここからは、本をほとんど読まなかった娘が、どうやって読書と仲よくなっていったのか。
その過程を、わが家の実体験を交えながらお話ししたいと思います。
目次
3年生までの国語の成績と、心の中の不安
読書量は少なくても、3年生までの娘の国語偏差値は平均60前後で推移していました。
小1の1年間は毎日日記を書き、幼児期から日々たくさん会話をした。
そうした“言葉の土台”が、低学年のうちはほどよく機能していたのかもしれません。
ただ、心の中にずっと不安がありました。
中学受験では文章が急に長くなり、語彙も抽象度も上がります。
「このまま読書をしないまま進んで、本当に中学受験に対応できるのかな?」
その漠然とした不安が、私の中にずっと残っていました。
その後、現実は想像していたとおり訪れました。
5年生の後半、浜学園の公開テストで文章量と難易度が一気に上がったとき、娘は初めて大きく偏差値を落としました。
“読むスピード”と“理解の深さ”が同時に求められるようになり、今までの力では追いつかなかったのだと思います。
ただ、この「落ち込み」は悪いことばかりではありませんでした。
娘の読書が、本当の意味で“伸びていく”土台になったからです。
読書開花のきっかけは、たった3つ
3年生までほとんど読書らしい読書をしていなかった娘が、4年生になった頃から急に本を読むようになりました。
もちろん「急に」といっても、ある日突然読書家になったわけではありません。
気づいたら、本を手に取る姿が増え、読んだ本を話してくれるようになり、
読書が生活の一部に入り込んでいた――そんな自然な変化です。
その背景には、わが家にとって決定的な3つのきっかけがありました。
1|“本の虫の女の子”との出会い
4年生のクラスに、とにかく本を読む女の子がいました。
お母様も「ずっと本ばかり読んでいる“本の虫”なんです」とやさしく笑ってお話しされていて、その言葉どおり、本当に読書が生活の中心にあるような子でした。
ハリーポッターをすでに読破し、児童文学からファンタジーまで幅広く読み込み、語彙も豊か。書く文章もしっかりしていて、授業での発言にも説得力があります。
娘にとって、その子は“憧れ”そのものでした。
親がどれだけ言っても読まなかったのに、同級生の影響で、娘の中に小さな火がついたのです。
「この子みたいに読んでみたい」
「本を読めたら、もっと話が合うかもしれない」
子どもにとって“自分より少し先を歩く同年代”は、何よりの刺激になります。
娘にとって、読書の世界の扉を開くきっかけになってくれた子でした。
2|担任の先生の“押しつけない読書サポート”
4年生の担任の先生は、子どもたちが“本を好きになるきっかけ”をつくるのが本当に上手な方でした。
教科書で扱った作者の別作品を学級文庫にそろえてくれたり、授業中に子どもたちが興味を示した本を、翌週にはそっと棚に置いてくれたり。
おすすめしてくれるときも、「これ読みなさい」ではなく、「これ、面白かったよ」と友達のように何気なくすすめてくれる。
そして驚くことに、ある鉄道好きの子のために、1万円以上もする専門書を自費で買ってきてくれることも。
子どもの「好き」を大切にしてくれる姿勢に、私も何度も胸があたたかくなりました。
娘にとっても、“読書=自分で選べる楽しいもの”というイメージが、この先生のおかげで自然に育っていきました。
3|大きな本棚が「自分の世界」をつくった
4年生で通塾が始まり、教材収納のためにも大きめの本棚を購入しました。
これが思っていた以上に大きな効果をもたらしました。
自分で選んだ本を並べる場所ができると、本棚そのものに愛着が生まれます。
「この本、読んでみようかな」
「ここにもっと好きな本を並べたいな」
読書を習慣にしようと意識したわけではありません。
ただ、“自分の棚を好きなもので満たしたい”という気持ちが芽生えたことで、自然と本に向かう姿勢が整っていきました。
私は、娘が選んだ本はできるだけ買いました。
本棚が「自分の世界」になってほしかったからです。
それからもう一つ、
ハリーポッターを読み始めた頃には、魔法の世界をイメージしたブックマーカー(しおり)も手作りしました。
娘が喜び、お友達にも何個かプレゼントするほど気に入ってくれたのは、私にとって密かな嬉しい記憶です。


5年生で出会った“本の虫の男の子”
4年生の女の子との出会いが最初の火をつけてくれましたが、もう一つ大きかったのが、5年生で仲良くなった本好きの男の子の存在です。
その子は読書家というより、“本を配って歩く人”というくらい(笑)、
「これ面白いよ!」と次々におすすめの本を貸してくれるタイプ。
私は普段、娘に本を与える前に内容を必ずチェックしていました。
年齢に合うか、表現が強すぎないか、受験期に読むには重すぎないか。
親としてどうしても気になる部分があったからです。
ところが、その男の子が貸してくれる本は、彼の家で“おばあちゃんが事前に内容確認をしている”とのことでした。
私はおばあちゃんとは面識がありませんが、「小学生が安心して読める本だけを選んでいる」らしく、そのおかげで事前チェックの手間がかなり省けて、正直とても助かりました。
子どもの世界の中で広がる読書体験の裏側には、こんなふうに、別の家庭の誰かの存在がそっと支えてくれていることもあるんだなと感じた瞬間でした。
読書量はどう増え、どれだけ読めるようになったのか?
4年生の最初は、宮沢賢治などの児童文学から始まりました。
そこから突然ダレン・シャンにハマってシリーズを読み切り、次にハリーポッターへ。
その後は瀬尾まいこさん、辻村深月さんの現代文学にも興味を広げ、合間にはなぜか『次郎物語』に戻り、5巻まで読み切ってしまうことも。
(※次郎物語が5巻まであるなんて、知らなかった)
6年生の頃には、恩田陸『蜜蜂と遠雷』のような長編も読めるようになりました。
3年生の頃、「ミッケ!」や迷路の本しか見ていなかった娘からは、想像もできなかった姿です。


読書が国語の成績にどう影響したのか?
劇的ではないけれど、大きな意味のある変化
読書量が増えたことで、数字が急激に跳ね上がったわけではありません。
▼偏差値の推移
本読み前(3年)61.5
→(4年)62.4
→(5年)63.9
→(6年)62.3
見た目は“横ばい”に近いかもしれません。
でも、実感としては大きな変化がありました。
- 文章を読むスピードが確実に上がったこと。
- 難しい文章でも途中で息切れしない“読む体力”がついたこと。
こうした変化こそ、数字には出にくいけれど受験では確かに意味を持つものだと思います。
読書をすすめてくれた大人たちの言葉
ある教育関連会社の社長さんに、中学受験に成功した家庭の習慣を聞いたことがあります。
返ってきたのはとてもシンプルな答えでした。
「暇さえあれば、本屋か図書館に連れて行った」
そして、こうも言われました。
「ハリーポッターはいいよ。あれは愛も正義も裏切りも嫉妬も全部入ってる。人間の縮図だから」
国語専門塾の先生も同じことを言っていました。
また巷では「全巻読み切ると志望校に合格する」というジンクスまであるそうです。
娘がハリーポッターに夢中だった時期のことを思い返すと、その言葉が頭をよぎり、宿題そっちのけで本を読む姿に私もそっと見守る気持ちになれました(笑
最後に|読書は“習慣”より“きっかけ”
読書が苦手な子に「毎日読みなさい」と言っても、なかなか動きません。
読書は努力よりも“きっかけ”で変わります。
わが家の場合、
・憧れの同級生
・寄り添ってくれる先生
・自分だけの本棚
・本を届けてくれる友達
こうした小さなきっかけが積み重なったことで、娘の読書の扉が自然と開いていきました。
もし今、お子さんが本を読まなくても大丈夫です。
“その子にとってのきっかけ”が見つかったとき、読書は驚くほど自然に動き出します。
親ができることは、そのきっかけをそっと増やしておくこと。
その子のペースで物語の世界へ踏み出す日を、あたたかく待つこと。
お子さんの読書の扉が、やさしく開く日が訪れますように。
わが家の体験が、どこかのご家庭の安心につながれば嬉しいです。