
本番前に迷いやすい「もうひとつの受験」との付き合い方
「前受けって、受けたほうがいいのかな…」
「本番前にわざわざ合格しても絶対行かない学校を受験する意味ってある?」
「受験料、普通に〇万円かかるんだ・・・」
「〇〇君、前受け校どうした?」
6年生の秋〜冬になると、ママたちの間でよく出てくる話題のひとつが「前受け受験」です。
塾の先生からすすめられることもあれば、周りのお友達がどんどん出願していって、なんとなく焦りや不安を感じる方も多いのではないでしょうか。
この記事では、
- 前受けのメリット・デメリット
- 「わが家は前受けをしなかった」という実体験
- 周りのご家庭を見て感じたこと
- どんな子に向いているか、向いていないか
- 前受けを「する場合」「しない場合」の準備の仕方
を、できるだけ多角的な視点から整理していきます。
どちらを選ぶのが正解、という話ではありません。
「うちの子にはどうだろう?」と、親子で考えるための材料として、参考になればうれしいです。
目次
前受けってそもそも何?
「本番前のリハーサル」としての受験
前受け受験は、第一志望や本命校の入試より少し早い時期に、別の学校を受験することを指します。
多くのご家庭が前受けをする理由は、おおまかに次のようなものです。
前受け受験する理由
- 本番の雰囲気に慣れるため
- 合格をひとつ持っておき、自信につなげるため
- 親も「当日の動き方」を体験しておきたいから
どの理由も、とてももっともらしく聞こえますし、実際に前受けが大きな安心材料になっているお子さんもいます。
一方で、「そこまでして受けなくても…」「直前期に体力や時間を削るのが心配」という声もあります。
つまり前受けは、“して当たり前”でもなければ、“しないとダメ”なものでもないということなのだと思います。
多くの子どもにとっての「前受けのメリット」
まずは、前受けをすることで得られる良い面から見ていきます。
これは、わが家だけでなく、周囲のご家庭や塾の先生の話を聞いて感じた、比較的一般的な傾向です。
1.入試の「空気」に事前に触れられる
塾のテストや模試とは違い、入試本番には独特の緊張感があります。
- 受験生だけが集まる張り詰めた空気
- 係の先生の指示に従って移動する流れ
- 親と離れてひとりで教室に向かう時間
そして、教室に入ってからも
- 静まりかえった教室
- 机に置くもの準備(受験票や筆記用具)
- 試験開始までの過ごし方
こういった一つひとつが、子どもにとっては初めての経験です。
本番が「ぶっつけ本番」になるのと、一度どこかで体験しておくのとでは、心の構え方が変わってきます。
特に緊張しやすいタイプの子にとっては、前受けが “本番の予行演習” のような役割をしてくれる、という声が多く聞かれました。


2.合格をひとつ持っておける安心感
もうひとつ大きいのが、前受け校での「合格体験」です。
もちろん前受け校が本命校ではないとしても、実際に合格通知を手にするのは、子どもにとって大きな自信になります。
「自分はここまで頑張ってきたんだ」
「ちゃんと合格できる力があるんだ」
こうした手応えがあると、本命校の入試に向かうときの表情が、少し柔らかくなる子が多いように感じます。
特に、普段から自信をなくしやすい子、模試の判定に一喜一憂してしまう子にとっては、“目に見える合格” が心の支えになることがあります。
3.親にとっても「当日のイメージトレーニング」になる
前受けの良さは、子どもだけではありません。
実は親にとっても、当日の動きがイメージできるのは大きな安心材料です。
- 何時ごろに家を出れば安心か
- 会場のまわりにコンビニやトイレはあるか
- 待ち時間をどこでどう過ごすか
- 解散の流れや人の混み具合
- 試験後、子供との合流はスムースにできるか
こういった「細かいけれど気になること」が、前受け当日でだいたいつかめます。
本番はママ自身もとても緊張する日です。
前受けで段取りが見えていると、当日の親の表情や声かけにも、少し余裕が生まれるかもしれません。
前受けのデメリットと、見落としがちなリスク
一方で、前受けには現実的な負担もあります。
「いいところ」だけではなく、「しんどくなりやすい部分」も知ったうえで、判断していけると安心です。
1.直前期の貴重な時間と体力を使う
前受けは、どうしても時間と体力を使います。
地方校を都市部で受けられるケースもありますが、それでも
- 移動
- 早起き
- 慣れない環境での長時間の緊張
などが積み重なります。
宿泊を伴う場合は、丸一日〜数日単位で、本命校対策の勉強時間が削られることもあります。
また、前受け校の過去問を「まったく見ない」というわけにもいかず、最低限の対策をするご家庭が多いので、その分を本命校対策に使えたのでは…? と、後から不安になるママもいました。
2.健康面のリスクが増える
12月〜1月、2月は、インフルエンザや風邪が流行しやすい時期です。
人の多い場所に出向くだけでも、体調面のリスクはどうしても高くなります。
「前受けの帰りの電車で咳をしている人が多くてヒヤヒヤした」
「前受の試験会場で、風邪をひいてるのか体調悪そうな人がいた」
「前受けのあとからなんとなく体調を崩して、本番前に焦った」
そんな声もありました。
もともと体調を崩しやすい子や、毎年冬に長引く症状が出やすい子にとっては、“無理に予定を増やさない” という判断も、十分にあり得る選択です。
3.会場が「本番と同じ雰囲気」とは限らない
他県受験や別会場受験の場合、入試が実際の学校ではなく、オフィスビルのセミナー室のような場所で行われることもあります。
この場合、「入試の雰囲気に慣れる」という目的は、あまり果たせないこともあります。
- 机や椅子が仮設で、落ち着かない
- 教室ではなく、会議室のような空間
- 休み時間の過ごし方も本番校とは違う
こうなると、「本命校のリハーサル」というよりも、「ただひとつ試験が増えただけ」という感覚になってしまう可能性もあります。
わが家は「前受けをしなかった」理由
ここで少しだけ、わが家のケースもお話させてください。
ただし、あくまでひとつの例として、「こういう判断もあるんだな」くらいに読んでいただければと思います。
わが家は、最終的に前受け受験はしませんでした。
理由はいくつかあります。
ひとつは、受験校のひとつが「プレ入試」を実施しており、また別の受験校では塾がその学校の校舎を借りて入試演習をしてくれていたこと。
実際に受験する学校の教室でテストを受けられたので、「本番会場でのリハーサル」 をすでに経験できていたのです。
親としても、
- 自宅出発から校門まで送迎の流れ
- 試験後、子供との合流
- 試験中の過ごし方
子供も
- 教室の雰囲気やトイレまでの動線
- いつもの(塾)メンバーではない子たちが沢山いる環境
- 問題用紙や解答用紙の取り扱い方
が事前にわかり、これ以上ないくらいのシミュレーションになりました。
もうひとつの理由は、その学校に「コースごとの回し合格制度」があったこと。
上位コースでダメでも、どこかのコースには合格できる可能性が高く、“全落ち”への極端な不安が少なかった のです。
さらに、子どもの性格も影響しました。
娘は小さい頃から音楽系の習い事で舞台に立つ経験を重ねていたためか、本番に強く、あまり緊張しないタイプでした。
プレ入試や模試でも、「緊張で頭が真っ白になった」という様子はほとんどなく、親としても「本番に関しては、そこまで心配はいらないかもしれない」と感じていました。
一方で、毎年12月~1月は鼻づまりや咳が長引きやすく、体調を崩すと成績も下降気味になるので「体調を整えることを最優先にしたい」という思いもありました。
こうした事情を総合して、わが家は “前受受験するより、本命校と体調管理に集中しよう” という選択をしました。
ただ、これはあくまで「この条件がそろっていたからこそ」の判断であって、すべてのご家庭に当てはまるものではありません。
同じ状況でも「それでも前受けをしたい」と考えるご家庭もあるでしょうし、それもまた一つの正解だと思います。
周りのご家庭を見て感じた「前受けが救ってくれた子どもたち」
一方で、周りのお友達やママたちを見ていて、前受け受験は本番への準備なんだなと改めて感じることも多くありました。
多くの子どもは、大人が想像する以上に 緊張しやすい です。
いくら塾で毎月のようにテストを受けていても、入試本番はやはり別格。
- トイレに行くタイミングがつかめない
- 周りの受験生がすごくできそうに見える
- 受験票や問題用紙・解答用紙の扱いに戸惑う
- 係の先生の指示を聞き逃してしまいそうで不安
そんな「ちょっとしたこと」で、心が乱れたり、自信をなくしてしまう子もいます。
だからこそ、あえて前受けを2〜3校受けることで、場慣れと自信を積み重ねていくというご家庭もありました。
そして、合格をつかみとった子供たちは自信をつけていたのがとても印象的でした。


前受けが「向いている子」「向いていない子」
ここまでを踏まえて、あくまで傾向としてですが、前受けがプラスになりやすいタイプ、注意したほうがよさそうなタイプを整理してみます。
前受けが力になりやすい子
- 初めての場や人に強い緊張を感じやすい
- 模試でも、前半は緊張して点数が伸びにくい
- 自分に自信を持ちにくく、「本当に受かるのかな」と不安になりやすい
- 環境に慣れると力を発揮しやすい
こうした子にとって前受けは、「緊張の練習」と「合格体験」をまとめて経験できる機会になり得ます。
前受けを減らしたほうがよいかもしれない子
- 体力があまり強くなく、すぐ疲れてしまう
- 冬に体調を崩しやすい
- 予定が増えると、かえって不安が強くなる
- ひとつ結果が悪いと、大きく落ち込んでしまう
このタイプの子にとっては、前受けがかえって負担になってしまう可能性もあります。
大切なのは、「みんなが受けるから」ではなく、「うちの子にとってどうか」で考えること。
同じ子どもでも、6年生の直前期とでは、心の状態が違うこともあります。
迷ったときは、塾の先生にも「うちの子のタイプ」を前提に相談できると安心ですね。
前受けをするなら、大事にしたい3つのポイント
もし前受けをするなら、「やみくもに増やす」のではなく、目的をはっきりさせて選ぶと、親子ともに疲れにくくなります。
以下の3つのポイントを
1「必ず受かるレベルの学校に出願する」
前受けの目的は、あくまで「場慣れ」「自信づけ」であって、「チャレンジ校を増やすこと」ではありません。
2「当日のシミュレーションとして使う」
前受け当日を、本番への練習と位置づけて、家を出る時間、朝の準備、持ち物のチェック、待ち時間の過ごし方など、一連の流れを意識して経験できると、本命校の当日がぐっとイメージしやすくなります。
3「過去問は1年分を軽く見る程度にする」
前受け校の過去問を何年分もやり込む必要はありません。
形式や時間配分を知るために、1年分をさらっと確認する程度で十分です。
前受け受験校に確実に合格するためにも全く過去問を見ずに受験することのないようにしてください。
時間に限りがある時期です。
対策しすぎて、本命校の勉強や日々のルーティーンがおろそかにならないよう気を付けてください。
あくまでバランスが大切です。
前受けをしない場合にできる「当日対策」
では、わが家のように前受けをしない場合、当日の緊張や不安にどう備えられるでしょうか。
前受けしない場合の当日対策
- 学校が実施するプレ入試や塾主催の学校名の模試に参加しておく
- 学校の入試説明会に子供と参加する
- 家で起床~入試終了までの「当日の流れ」をシミュレーションしておく
- 募集要項など試験に関する事項を親子で読み合わせし、机に置くものなどを確認する
- トイレのタイミングや、休み時間の過ごし方について事前に話しておく
こうした準備でも、子どもの心の中に「当日のイメージ」をあらかじめ描いておくことはできます。
前受けをしない選択は、何もしないことではありません。
「どこで本番の練習をするか」「どんな形で安心を用意するか」
その方法が、前受けなのか、プレ入試なのか、家庭でのシミュレーションなのか、という違いなのだと思います。
最後に:前受けは“義務”ではなく“道具”のひとつ
前受け受験について、いろいろな角度から見てきました。
- 緊張しやすい子には、大きな支えになることもある
- 一方で、時間や体力、健康面のリスクもある
- 家庭の事情や、子どもの性格・体調次第で「正解」は変わる
前受けは、本番を安心して迎えるための“道具のひとつ” にすぎません。
受けたからといって合格が保証されるわけでもないし、受けなかったからといって不利になるものでもありません。
大切なのは、
- 子どもの性格
- これまでのテストでの様子
- 体調や体力
- 家族のスケジュール
そういったものをひとつひとつ思い浮かべながら、「うちの子にとって、いちばん安心して本番を迎えられる形は何だろう」と考えていくことだと思います。
どちらの選択をしても、その過程でたくさん悩んで、話し合って、決めたことなら、きっとお子さんにとっての力になっていきます。
この記事が、前受けを考えるときのちょっとした道しるべになればうれしいです。